心に元気がない状態は一般に「うつ」と言われています。うつは気分の障害です。気分とは精神の活動状態の全般的傾向のようなもので、気分が沈滞するといつもくよくよとして、なにもできず、考えも浮かばないような状態となります。これが行き過ぎると仕事も手につかず体はどこも悪くないのに布団から出られないような感じになったりします。
うつは年齢にかかわらずおこりうる病態ですが、高齢者における問題として認知機能の低下とならんで重要な位置をしめています。
「うつ病」として診断される場合は、気分、喜びの喪失、自責感といった精神症状に加えて、全身倦怠感、体重減少あるいは増加といった身体症状を伴った状態が典型的です。具体的には、
➀「気分が落ち込む」または、②「興味がわかない/喜べない」という症状のいずれかがあり、そのうえで、
③「著しい体重減少または増加もしくは食欲の減退または増加」④「不眠または睡眠過多」⑤「焦って落ち着かなくてじっとしていられない、または逆に身動きがとれない」⑥「疲れやすい、気力がでない」⑦「自分に価値がない、自分が悪いと思う」⑧「物事に集中できない、決められない」⑨「死について繰り返し考えてしまう」
の➀から⑨までの症状のうち、合わせて5つ以上の項目に当てはまれば、「うつ病」の可能性を考えます。そのうえで、苦痛であり生活の問題が生じていて、その状態が他の病気や原因からは説明できない場合、「うつ病」とみなして対応を行います。うつ症状がいくつか認められるけれども「うつ病」とまではいえない程度の気分の落ち込みは、「うつ状態」という言葉が使われます。うつ状態とうつ病をふくめて「うつ」と表現されることもあります。