「ほめる」言葉が持つ驚きのパワー
2010年、アメリカや日本など7カ国で国際研究が行われました。
脳卒中の患者179人を調べた結果、歩くリハビリをする際に「ほめられた」患者は、「ほめられなかった」患者より、歩くスピードが大幅に速くなることがわかりました。
リハビリの結果、どれだけ早く歩けるようになったかを調べたテストの結果は、
・ほめられたグループ…10秒間で9.1m歩けるようになった
・ほめられなかったグループ…10秒間で7.2m歩けるようになった
で、およそ1.8倍の改善効果が見られました。
ほめることによってリハビリへのやる気が生まれ、改善に結びついたということもあるかもしれません。しかし、研究者は、この結果の背景に、もっと奥深いメカニズムがあると考えました。
私たちの脳には、「報われる」ことに反応する特別なシステムがあります。今回の研究で、「ほめる」というシンプルな方法により、このシステムを刺激することに成功し、大きな改善を得られたと考察されました。
何らかの欲求が満たされたときに活性化し、その個体に「気持ちいい」感覚を与えることが、脳の報酬系と言われています。「気持ちいい」感覚があるとき、報酬系が活性化してドーパミンという物質を放出していると考えられています。
また、最近の研究では、脳にはドーパミンが得やすいように、自らの構造を変えていく性質があることがわかってきました。
先ほどの脳卒中リハビリの例について考えてみます。
早く歩けたときに“ほめられる”と、「報酬系からドーパミンが放出」→「ドーパミンを得やすいように構造を変える」→「その結果、歩くときに必要な神経回路が強化され、より歩きやすくなる」というメカニズムが推測されます。
上手にほめる 3つのポイント
上手にほめる「3つのポイント」は
・「具体的」にほめる
・「すかさず」ほめる
・目標は「低く」する
です。
まず具体的という点では、例えば歩くリハビリであれば、歩くスピードを計測し「すごいですね!昨日より0.5秒早くなっていますよ」というように「具体的」に伝えるのがポイントです。
また、何か進歩があったらすかさずほめることも大事です。
さらに、最初は低い目標から始めて段階的にハードルを上げていくことで、達成感を得たり、成功体験を積み重ねたりできます。
脳はいつも、ほめられたがっています。