便秘の自覚症状としては、下腹部の不快感、膨満感(ぼうまんかん;膨れた感じ)、腹痛、吐き気、嘔吐(おうと)などの訴えが多いです。
「便秘」をそのまま放置しておくと、腸閉塞や直腸潰瘍、そして虚血性腸炎などの合併症を引き起こすことがあります。
便秘の原因
高齢者に起こる「便秘」は、加齢に伴う食事量やADL(日常生活動作)の低下、生理的機能の低下などの原因でおこります。
◎身体活動や食事摂取量の低下
・腸内容の減少、腸管壁への物理的 ・ 拡張刺激の減弱、腸局所血流の低下
・腸管の緊張や蠕動運動の低下
◎腸管筋層の萎縮、結合織の増加
・大腸を支える組織の緊張・運動の低下
・大腸憩室の増加
◎腸管壁緊張低下の助長
・腸の神経の変化
◎腸管の分泌低下
・便硬度の増大
◎腸がおならを吸収する機能の低下
・腸管内腔の拡張、腸がおなかの中で曲がる部分の異常
◎直腸壁の感受性低下
・排便反射の低下~消失
◎排便に関する筋力(腹筋・横隔膜筋・骨盤底筋群等)の低下
・腹圧の低下、直腸と肛門の角度を保つ力の低下
◎高齢者に多くみられる疾患との関連
・脳血管障害、肺気腫、心不全
◎高齢者のライフスタイルと心理的要因
・少ない食事量
◎繊維成分の少ない食事内容、水分摂取の低下、便意の抑制
◎浣腸や下剤の習慣性
また高齢者では合併する心血管系疾患や消化器疾患、神経疾患などに対して治療薬が複数投与されていることが多く、薬剤が便秘の誘因となることもあります。
便秘の治療
原因となる病気をもつ場合は、まず原疾患の治療を行います。それと同時に生活習慣の改善や食事・運動療法を試みます。
薬剤性の場合、中止可能な薬であれば原因となる薬剤を中止します。無理であれば生活指導や食事療法とともに、適切な下剤を併用します。
便秘のケア・予防
排便の規則性
毎朝、便意がなくても一定の時間にトイレにいく等、排便の規則性をつけると良いでしょう。またウォシュレットで排便前に肛門マッサージを行うことが大変有用です。
適度な運動
適度の運動を毎日の生活リズムの中に組み込み、毎日、継続することを心がけましょう。運動により、腸の活動が活発になります。
食生活
食生活では、以下のポイントを押さえて、便秘を放置せずに素早く解消しましょう。
・食事は1日3回規則正しく食べる。特に朝食を摂ることは腸を刺激し、排便を促します。
・水分を十分に摂る。 食事、食間の水分摂取のほか、起床時に冷たい牛乳や冷水をコップ1杯程度飲むのも水分補給と腸の刺激に有効です。
・食物繊維を多く摂る。
・食物繊維が水分を吸着し、便量を多くし、柔らかくして、便を排泄しやすくします。
・食事量を確保する。食事量不足は、便の材料不足による「便秘」の原因になります。
・食事には適度の油を取り入れる。油は腸での潤滑油となり、便を出やすくします。
・適度の酸味や香辛料で腸を刺激する